止水栓とはトイレの給水管や洗面台の給水給湯管に取り付けてある、その名のとおり水を止める栓のことですが、トイレの水が何かの異常で出っ放しになってしまったり、洗面台の下で給水管から水漏れしている場合など、時計回りに閉めると台所やお風呂など他の水道を止めることなく、とりあえずその箇所だけ水漏れを止めることができます。
また、自分でロータンク内の部品を交換する場合や、各水栓のパッキン交換、水栓本体の交換などの場合も止水栓を閉めて作業を行います。
普段はあまり触らない止水栓ですが、いざ水を止めようと回してみると固くて回らないがあります。両手で掴んで思いっきり回しても、うんともすんともいわない。しまいにはハンドルの角で手の平が痛くなります。
水漏れの状況もポタポタ程度なら良いのですが、ジャージャーと出っ放しで、早急に止めたい時にハンドルが回らないと水道メーターの元栓を閉めるしかありません。元栓を閉めると全ての水が使えなくなってしまいますので、普段から止水栓の動きを確認しておいた方が良いですよ。
この記事を読んで分かること
自分で直す難易度
固着した止水栓の直し方が分かる
止水栓の部品の交換方法が分かる
絶対にやってはいけないことについて分かる
■ もくじ
止水栓が固着する原因
もうこれ以上回らないというところまで全開にしていると、年数とともにその状態で固着してしまいます。止水栓内部のスピンドルのネジの部分に、サビや石質の汚れが堆積して、ちょっとやそっとでは回らないほど固まってしまいます。
また、入居以来一度も触ったことがないというような場合だと全開になっていなくても固着することがあります。
一般的な止水栓には3つのタイプがある
一般的な止水栓にはハンドル式止水栓、D式(ドライバー)止水栓、内ネジ式止水栓の3つのタイプがあります。
ハンドル式止水栓
ホーム水栓や自在水栓と同様に、ハンドルで開閉を行うタイプの止水栓です。マイナスドライバーやコインなどを使わずに、素手で開閉ができるので、3つのタイプの中では最も扱いやすいです。右に回すと閉まり、左に回すと開きます。
D式(ドライバー)止水栓
ハンドルが無く素手で開閉することはできません。止水栓の先端に➖の溝があり、マイナスドライバーやコインなどで開閉するタイプの止水栓です。内部はスピンドル構造です。右に回すと閉まり、左に回すと開きます。
内ネジ式止水栓
Lixil(リクシル 旧INAX)の止水栓です。袋ナットなどの部品は無く内ネジのキャップのようなタイプの止水栓です。開閉部にはD式(ドライバー)のように溝があります。キャップの部分は金属のものもありますが、黒い樹脂製をよく見掛けます。一般的なマイナスドライバーでの開閉ができないことも無いですが、溝の幅が広いため、水栓ドライバーを使用するのがベストです。右に回すと閉まり、左に回すと開きます。
止水栓の固着を直す方法
水道メーターの元栓を閉める
ハンドル式止水栓、D式(ドライバー)止水栓ともに、作業を行う前に水道メーターの元栓を閉めます。
固着している止水栓を直すには、止水栓の分解も供なうので、大元の水道メーターのバルブを閉めてから作業を行います。
水道メーターの場所や閉め方が分からない場合は、こちらの記事を参考にして下さい。
【重要!】水道メーターの場所を確認して閉め方を知っておく
自分の部屋(家)の水道メーターの場所はご存知ですか?キッチン、洗面台、トイレなどでは、器具の下に止水栓が付いているので、 ...
続きを見る
ハンドル式止水栓の直し方
使用する道具
- モンキーレンチ
- カランプライヤ(ウォーターポンププライヤー)
- ピックツール(あれば便利)
- 水栓シリコングリス
止水栓の袋ナットを外してハンドルを回す
水道メーターの元栓を閉め、止水栓の袋ナットを反時計回りに回して緩め、完全に外した状態にします。ハンドルが全開で固着している場合は、袋ナットを緩めることで回しやすくなります。
次に固着したハンドルを緩めるのですが、素手で回そうとすると手を痛める場合があるので、軍手をはめたり(滑り止め付きの軍手を推奨)タオルなどでハンドル掴み反時計回りにグッと力を入れて回します。動かない場合は時計回りに回して見ましょう。
素手でハンドルが回せない場合
どうしても素手でハンドルが回せない場合は、カランプライヤ、ウォーターポンププライヤーなどを使用します。傷が付かないようにハンドルをタオルや雑巾などで覆い、反時計回りに回します。テコの原理で力が伝わりやすくなるので、素手よりも簡単に回すことができます。滑りやすいので、片手でハンドルとプライヤーを押さえながら回しましょう。
ココに注意
ハンドル一式を外すと給水管内に溜まった残り水が出てくるのて、下に水受けを置いたりタオルなどを敷いて水浸しにならないように作業しましょう。止水栓内部には汚れがかなり付着しているのできれいに拭き取ります。
スピンドルの掃除、上部パッキンと水栓コマを交換する
ハンドルを回すことができれば固着は解消されますが、そのまま袋ナットを締め付けても、ほぼ水漏れを起こします。止水栓上部を取り外したら、合わせてパッキンの交換やスピンドルのメンテナンスを行いましょう。
上部パッキンを交換するためには、ハンドルを取り外さないと交換することができません。ビスを反時計回りに外してハンドルを引き抜きます。ビスを回すにはカランプライヤがおすすめです。先端がビスの頭を掴むのに丁度良い形をしています。ビスが固着して回せないときは、KURE5-56などの潤滑油を浸透させると回しやすくなります。
ビスが外れても、今度はハンドルが固着して引き抜けないことがあります。固着していると素手では外すことができません。
簡単に一瞬で外す方法があります。下記の記事を参考にしてください。超かんたんに外れます。
解決!固くて外れないホーム水栓のハンドルを超かんたんに外す方法
ホーム水栓のハンドルを開いた時に根元から水漏れする場合、上部ナットの緩みや、上部パッキンの劣化が原因です。上部パッキンを ...
続きを見る
ハンドルが外れたら袋ナット、上部パッキン、座金、スピンドルと分解します。袋ナット内に上部パッキンが張り付いているときは、ピックツール(リングオーピックツール)を使うと簡単に外すことができます。
メモ
上の写真では水栓コマ(ケレップ)が独立しているタイプですが、スピンドルと一体式の「固定コマタイプ」もあります。凍結時にコマだけが張り付いてしまうことがないため、寒冷地に適した仕様です。寒冷地以外では、通常の水栓コマの方が交換の手間がありません。固定コマタイプはビスを外してパッキンを交換します。
全てを外して分解できたら、上部パッキンと水栓コマを新しいものに交換しましょう。スピンドルに付着したサビや汚れをきれいに拭き取り、ネジ部に破損が無いかを点検しましょう。ネジ部に欠けがある場合は新しいものに交換します。
スピンドルのネジの部分に水栓シリコングリスを塗布すると、修理後のハンドルの動作が見違えるほど良くなります。また、今後の固着防止にもなります。
水栓シリコングリスについてはこちらの記事をご覧下さい。
水栓シリコングリスの使い方とプロが使用するグリス
シングルレバー混合水栓は交換部品のコストもそれなりに掛かるため、原因が経年劣化の場合は本体ごとそっくり交換した方が結果的 ...
続きを見る
上部パッキンと水栓コマの交換、スピンドルの清掃、水栓グリスの塗布が終わりましたら、外した逆の手順で取付けます。
ココに注意
袋ナットは強く締め過ぎるとハンドルの動作が固くなります。逆に緩すぎると水漏れします。ハンドルの根元から水漏れしない程度で、動作も軽い、ちょうど良い塩梅を見つけましょう。
D式(ドライバー)止水栓の直し方
使用する道具
- モンキーレンチ
- 水栓ドライバーまたはマイナスドライバー
- カランプライヤ(ウォーターポンププライヤー)
- ピックツール(あれば便利)
- 水栓シリコングリス
ハンドル式止水栓と比べると、D式(ドライバー)止水栓の固着を直す方が難易度は高目です。結論から先に言いますと、D式(ドライバー)止水栓が固着した場合、マイナスドライバーや水栓ドライバーなどで開閉しようとしてもかなりの確率でドライバーを差し込む「ー」の部分が変形して傷が付きます。また、どんなに力を込めてもビクともしない事が多いです。今後のことを考えれば、ドライバー式からハンドル式に交換した方がかなり使いやすくなります。止水栓の本体はそのままで、ハンドル一式だけ交換することができるのでとても簡単です。
ドライバー式からハンドル式への交換はこちらの記事をご覧ください。
【おススメ!】ドライバー式止水栓をハンドル式に交換すると開閉が楽になる
止水栓にはドライバー(D)式、ハンドル式、内ネジ式(INAX)の三種類ありますが、一番使い勝手が良いのはハンドル式です。 ...
続きを見る
傷や変形を気にしないという方用に説明します。
固着したD式(ドライバー)止水栓を回すための道具はいくつかあります。それぞれの道具のメリットとデメリットも含めて説明します。水道メーターの元栓を閉め、止水栓の袋ナットを外して作業を行うのはすべて共通です。
- マイナスドライバーで回す
- 水栓ドライバーで回す
- ウォーターポンププライヤーまたは小型のパイプレンチで回す
- ハンマーで叩いて回す
止水栓の袋ナットを外して回す
止水栓の袋ナットを反時計回りに回して緩め、完全に外れた状態にします。スピンドルが全開で固着している場合は、袋ナットを緩めることで回しやすくなります。
マイナスドライバーで回す
メモ
メリット: 家に一つはある。
デメリット:高い確率で止水栓の➖の溝が変形・破損する。
ドライバーの使い方の基本は、押す力が7で回す力が3です。マイナスドライバーの先端をしっかりと溝に合わせて回します。但し、回すことができても、マイナスドライバーの先端が細かったり薄かったりすると、いわゆる「ナメて」しまいます。止水栓の材質は真鍮(黄銅)で正面にメッキ加工されています。ドライバーの先端よりも柔らかい材質のため、簡単に変形したり欠けたりして、傷だらけの残念な見栄えになってしまいます。
また、マイナスドライバーを2本使って左右から差し込み、テコの原理で回す方法もありますが、止水栓は一見丈夫そうに見えますが、材質は真鍮で柔らかく、マイナスドライバーの硬さにまけてしまい、「一生懸命回しましたよ!」という痕跡が残ってしまいます。「ー」の部分が変形してしまいます。
水栓ドライバーで回す
メモ
メリット: 先端の幅が広く厚みがあるため、あそびが無く「➖」の溝にしっかりと合う。
デメリット:別途購入する必要がある。固着が激しいとマイナスの溝が変形する。
水栓ドライバーは、後述する内ネジ式止水栓に使用する道具ですが、先端の幅が広く、厚さも止水栓にピッタリとはまりますので、アソビやブレがありませんが、握るところが小さいため、いまいち力強く回すことができません。力任せではかなり困難です。プラスチック製で硬いため、持ち手が若干滑ります。滑り止め付きの軍手を使えば何とかという感じでず。他のメーカーで持ち手が大きいタイプや、持ち手の穴にドライバー等を差し込んでテコの原理で回すタイプもありますが、➖の溝がほぼ変形します。
ウォーターポンププライヤー、小型のパイプレンチで回す
メモ
メリット:ほぼ100%回すことができる。
デメリット:掴んだ箇所が深い傷だらけになる。見栄えが悪くなる。
固着しているD式(ドライバー)止水栓を回す方法で、一番手っ取り早いがこの方法です。タオルや雑巾を間に挟んで作業すれば、傷が付くことは防げますが、ハンドル式と違い掴める箇所が狭いので、滑りやすく回しづらいです。止水栓上部の交換を前提に直に掴むのが一番です。
ハンマーで軽く叩く(一般の方はやらない方が良い)
メモ
メリット: なし
デメリット: 両ネジ給水管に負担が掛かる。給水管が壁内で破損する恐れがある。一般の方には危険過ぎる。
錆びついて固着したボルトやナットを外す時に、ハンマーで軽く叩いて外すことがありますが、水回りの修理ではかなり危険が伴います。給水管が新品の状態であればある程度叩いても問題はありませんが、給水管が新品であれば、取り付けてある止水栓が固着していることなどありません。止水栓が固着しているということは、給水管はそれなりに劣化しているということです。
壁側に取り付けてあるアングル止水栓を例に説明します。止水栓に接続されている両ネジ給水管は、経年劣化するとネジ部分が腐食して、ちょっと力を加えるだけで簡単に折れてしまうことがあります。軽く叩いたとしても給水管に衝撃は伝わります。経年劣化した給水管のモロさを知っているプロは、予算が決まった現場では絶対にやらない行為です。
スピンドルの掃除、上部パッキンと水栓コマを交換する
ハンドル式止水栓のパッキン交換と同様の作業になります。コマパッキンと上部パッキンも交換し、スピンドルには水栓シリコングリスを塗布しましょう。
内ネジ式止水栓の直し方
水栓ドライバーで回す
このタイプの止水栓はほとんど固着しませんが、樹脂の部分が弱いためふつうのマイナスドライバーなどで開閉すると、ほぼ100%傷が付いたり変形します。10円玉でも変形します。
内ネジ式止水栓の開閉には水栓ドライバーを使いましょう。このためのドライバーでは?というくらいピタリとハマるので傷を付けること無く開閉ができます。
内ネジ止水栓が固着していても、水栓ドライバーを使用すれば比較的回しやすいです。他の止水栓と同様に、時計回りで閉まり、反時計回りで開きます。但し、気をつけなくてはいけないことは、樹脂のパーツが使用されている場合です。ドライバーの先端をしっかりと合わせ、押し7、回し3で回さないと、簡単に変形してしまいます。
水漏れする場合
内ネジ式止水栓を分解してスピンドルの取り外しは可能ですが、交換する部品だけを購入することはできません。色々と調べてみましたが、メーカーのカタログ、分解図、ECサイト、ホームセンターなどでは見つけることができませんでした。水漏れする場合は、止水栓本体を交換するか(止水栓本体は購入可能)、同じタイプのネジ式の止水栓を購入して、スピンドルだけを部品取りして交換するかの、どちらかになります。
スピンドルの取り外しは、水栓ドライバーで時計回りに止まる所まで回し、本体のネジ部分にスピンドルの抜け防止のストッパーがあるので、これを先端の細いマイナスドライバーなどで外します。ストッパーを外すとスピンドルを取り外すことができます。
修理後のポイント
修理が終わったら元栓を開けて、水漏れがないか確認します。
ココがポイント
大切なポイントです!左回りに一度全開にしたら、半回転から一回転くらい右に回し戻しておくと、固着を防ぐことができます。いざという時に困らないように、絶対にやっておきましょう。
【固くて回らない止水栓直す方法|ハンマーで叩くのNGです!】まとめ
止水栓が固着して回らない場合でも、ハンドル式の止水栓であれば回すことができますが、ドライバー式の固着を回すのはかなり厳しいです。傷や破損を気にしないのであれば、ウォーターポンププライヤーやパイプレンチで回せます。「止水栓の固着を直す方法」とは話が変わってきてしまいますが、ドライバー式の固着は最初からハンドル式に交換するつもり作業した方が疲れないし、ストレスも感じません。止水栓もキレイになります。
ドライバー式からハンドル式への交換は、こちらの記事を参考にしてください。
【おススメ!】ドライバー式止水栓をハンドル式に交換すると開閉が楽になる
止水栓にはドライバー(D)式、ハンドル式、内ネジ式(INAX)の三種類ありますが、一番使い勝手が良いのはハンドル式です。 ...
続きを見る
内ネジ式止水栓を交換する場合は、メンテナンスが容易にできる、ハンドル式やドライバー式の止水栓に交換しましょう。交換方法はこちらをご覧下さい。
これで解決!止水栓を交換する方法|トイレ・洗面台・キッチン共通
トイレの止水栓はとても重要な箇所です。突然トイレの水が止まらなくなった時に閉めたり、ボールタップなど部品を交換する時にも ...
続きを見る
水まわりで何かトラブルがあった時に止水栓が固くて回らになんてことが無いように、日頃から止水栓の動きを確認しておくと良いですね。