便器に異物を流してしまうと取り外さないといけない場合があります。便器脱着はプロにしかできないと思われているかも知れませんが、取り付けてある仕組みが分かれば意外と簡単に脱着することができます。蛇口のパッキン交換ができれる方であれば便器の脱着も可能です。ちょっと大きくて重い便器に変わっただけの話しです。但し、蛇口のパッキン交換よりも難易度は上がります。
この記事を読んで分かること
自分で直す難易度
洋式大便器の脱着の仕方が分かる
洋式大便器を脱着して異物の取り出し方が分かる
実践してみると意外とできることが分かる
■ もくじ
使用する道具
使用する道具
- マイナスドライバー
- 石油燃焼機器用注油ポンプ(簡単に言うと灯油を入れるスポイト)
- モンキーレンチ
- ラクラッチ(ロング4サイズ板ラチェットレンチ8,10,12,13mm)※モンキーレンチで代用可、あると作業効率UPします
- プラスドライバー#2(密結ロータンクボルトの緩み増し締めに使用)
- カランプライヤ(そばに置いておくと何かと役に立つ道具)
- 点検鏡(使用方法、形等は写真参照)
- ライト(できれば両手がフリーになるヘッドランプが便利)
ラクラッチは持っているとかなり作業効率があがりますが、モンキーレンチで作業することは可能です。
交換に伴う消耗品
交換に伴う消耗品
- 床フランジ用ガスケット(PシールガスケットはTOTO製品の名称)
- 給水管パッキン(13mm用)
- 密結パッキン(サイズは38mmまたは51mm)
ちょっと待った!便器を外す前に確認すること
便器に物を落として見えなくなっても、まだ手前に引っ掛かっている可能性があります。便器を外すのは最後の手段です。まずは便器の穴から内部を覗いてみましょう。
鏡を使って確認する
まずは便器の底に溜まった水を抜きます。小さな手鏡でも良いですが、できれば持ち手が伸び縮する、小さな点検鏡があると便利です。ホームセンターで購入することができます。
排水穴はライトで照らさないと奥まで見ることができません。両手が使えるようにヘッドランプがあると便利です。片手に鏡、もう片方の手に取り出す道具、おでこにはヘッドランプです。引っ掛かっている物が見えれば取り出せる可能性は大きいです。取り出すには針金ハンガーが一番です。普通の針金だとクネクネと曲がってしまうので、針金ハンガーを使用しましょう。
ココがポイント
針金ハンガーは丈夫で硬いので、ガッチリと挟まっている異物をを取ることができます。針金ハンガーの先端を曲げて、L字か釣針のように曲げると引っ掛かけやすいです。
物が取れれば作業はここで終わりです。鏡で覗いて物が見えない場合は下記の手順で便器を外します。それでは外していきます。
洋式大便器 背負い式ロータンクタイプ
背負式ロータンクとは、ごく一般的な背中側にタンクが付いた洋式代便器のことです。
タンクを取り外す
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1止水栓を閉める
止水栓を閉めます。ハンドル式もドライバー式も時計回りに回して閉めます。ドライバー式はマイナスドライバーや水栓ドライバーを使用します。但し、止水栓をあまり開閉したことがないと、固くて回せないことがよくあります。止水栓が固着して閉めることができない場合は、下記の記事を参考にしてください。
これで解決!固くて回らない止水栓直す方法|ハンマーで叩くのNGです!
止水栓とはトイレの給水管や洗面台の給水給湯管に取り付けてある、その名のとおり水を止める栓のことですが、トイレの水が何かの ...
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2タンク内の水を抜く
ストーブに灯油を注入する時に使うスポイト(正式名称は石油燃焼機器用注油ポンプ)があると便利です。
まずは詰まっている便器内の水をバケツに吸い取ります。大便やペーパーが浮遊しているとスポイトが詰まってしまうので、大きな固形物は別に取り除きましょう。汚いと思いますが自分か家族のものですから大丈夫!
便器内の水をある程度吸い取ったら次にタンク内の水を抜きます。バケツを持ちながら直接タンクから水を抜くのはちょっとしんどいので、少しずつ便器に流しながら便器側で吸い取ります。
ココに注意
レバーを全開にすると便器から溢れる可能性もあるので、レバーの開閉は慎重に少しずつ流しましょう。本当に少しずつですよ。一定以上レバーを動かしてしまうとタンク内のバルブがカパーっと開いてしまいますの注意しましょう。
まあ、多少溢れたとしても掃除すれば大丈夫です。
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3タンクのフタを外す
タンクに手洗い管が付いていないタイプは、フタがタンクに乗せてあるだけです。
手洗い管が付いているタイプは、タンク内の部品(ボールタップ)とフタの裏側で接続されているのでそれを外します。
樹脂製の袋ナットやゴムのパッキンで接続されています。袋ナットの場合は反時計回りに外します。ゴムパッキンの場合は差し込んであるだけなので、そのまま引抜きます。
ココに注意
外すときは手洗い管を手で持たないようにしてください。プラスチック製のものなどは、すぽっと抜けてしまったり折れてしまうことがあります。必ずフタを持つようにしましょう。
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4タンク本体を外す
【ツバ付給水管の袋ナットを外す】
タンクと接続しているツバ付給水管の袋ナットをモンキーで外します。反時計回りに外します。袋ナットを緩めるとタンク内のボールタップが共回りしてしまう場合があるので、ボールタップをしっかりと抑えながら袋ナットを外します。
【密結ロータンクボルトのナットを外す】
便器とタンクを接続している左右の密結ロータンクボルトのナットを外します。タンク底の裏側なのでちょっと見づらいですが、ネジに対して反時計回りに外します。作業スペースが狭いため少々窮屈な作業になります。モンキーでも外せますがラクラッチがあると10倍楽にスピーディーに外すことができます。
【タンクを安全な場所に移動する】
タンク内には流しきれなかった水が残っていますので雑巾などで拭きとりましょう。残り水を拭き取ったら、タンクを両手で抱えてバスタオルなどを敷いた床上に、タンクが倒れて破損しない様に寝かせた状態で置きます。
便器とタンクの間には大きなパッキン(密結パッキン)が付いています。再利用できる場合もありますが、劣化の有無に関わらず新しいものに交換したほうが良いです。これもホームセンターで手に入ります。サイズは38mmと51mmの2種類ありますので、同じサイズのものを購入しましょう。
ココがポイント
密結パッキンのサイズは排水弁部のサイズで決まります。外したタンクの底を見て、底面から突き出している排水弁部の内径を測ります。38mmか51mmになります。
【密結ロータンクボルトを点検する】
タンクを床に置いたら、ついでに密結ロータンクボルトに緩みがないか点検しましょう。ボルトのナットが緩んでいると水漏れの原因になります。ボルトの頭の溝をタンク内からプラスドライバーで固定しながら、ナットを時計回りに増し締めします。
ココに注意
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5便器を外す
【便器内の水を抜く】
先ほどタンクから流した残りの水を吸い取ります。タンクと便器が接続されていた上側の穴にも水が溜まっているので、雑巾などで吸い出しましょう。
【便器を固定しているナットやネジを外す】
プラスチックのキャップを外し、ナット二箇所と床に固定している木ネジ二箇所を外します。このときスムーズにナットが回れば問題ないのですが、ナットとボルトが腐食して外せないことがあります。完全に錆び付いてナットを回すとボルトも共回りしてしまいます。腐食が進行するとナットがサビの塊になって原型を留めていないこともあります。
フランジボルトのナットが腐食して外せない場合に、とても便利な道具があります。下記の記事をご覧ください。
解決!便器のナットが錆びて外せない対処方法|ナットブレーカーで割ってしまおう
便器を脱着する時に、床に固定しているボルトのキャップを外してみると、ナットが錆び付いて回らないことがあります。さらに酷く ...
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【便器を起こす】
手前から正面壁側に便器を立てるように、静かに少しずつ外します。
便器と床フランジの間にPシールガスケット(硬いねん土の様なパテの様なもの)が付いているのですが、固まってしまっていることがあるので少しずつ外していきます。
ココに注意
【異物を取り出す】
便器の下の穴からライトで照らして覗いてみましょう。出口に無ければ小さな鏡で内部を覗いてみましょう。詰まったものが手前にある場合もあれば、奥にある場合もあります。奥に挟まっているのが見えたら、針金ハンガーで引っ掛けて取り出します。
※写真は先端が交換できるトイレブラシのスポンジが2つも詰まっていました。
▲小学校では掃除ブラシ、絵の具の筆、鉛筆などが詰まっていました。
【異物が確認できない場合】
写真の様に詰まっている異物が見えれば簡単ですが、難しいのは明らかに異物が入っている可能性があるのに、便器の上の穴からも下の穴からも、引っ掛かっているものが見えない場合です。その場合の直す方法を説明します。
この方法はローポンプスーパープラスを使用するのが前提です。(真空パイプクリーナーやラバーカップでも試す価値はありますが、圧力が弱いかも知れません。)
ローポンプスーパープラスについては、こちらの記事を御覧ください。
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水浸しになっても良い所に便器を移動します。外に持ち出すと途中で水が垂れたり、落として破損させる恐れもあるので、移動距離の短い風呂場が良いです。
大きめのタオルを風呂場の床に敷きます。ユニットバスなどFRPの床やタイルの床など、床と便器をお互いに傷付けない様にするためです。
便器の裏側を上にしてタオルの上に置きます。※上から入った異物は上から取るのが一番取りやすいので、便器を逆さまにします。
便器の裏側の穴に詰め物をします。雑巾やタオルを丸めて、隙間が無いように出来るだけ奥まで詰め込みます。ここでローポンプスーパープラスを使用します。真空の状態にしないと効果が弱くなるので、詰め込んだ穴に水を一杯まで注ぎます。
レバーを引いた状態にして、ローポンプスーパープラスを穴に合わせ、一気にレバーを押します。※通常の詰まりでローポンプスーパープラスを使用する場合は、レバーを「引く!」のが基本ですが、ここでは「押す!」です。※水が抜けやすいように雑巾を重ねて置いて、便器の下に隙間をつくると作業しやすいです。
一発でスポンッ!と抜ける場合もありますが、何回か繰り返さないとダメな場合もあります。注いだ水が抜けてしまったら、再度水を一杯にして作業してください。途中、丸めた雑巾やタオルの端だけが出てくる場合があります。端を掴んで一気に引っ張ると、詰まっていた物が出てきます。※この作業を行うと、異物に引っ掛かったペーパーや大便なども「ドバッ」と出ることがあります。排水溝に詰まらないように気をつけて下さい。
【特殊な方法で異物を除去する方法】
ボールペンを取り出す方法
便器にボールペンを落としてしまった場合、裏側まで行ってしまうことは殆どありません。一つ目の曲がりに縦に引っ掛かることが多いです。まずは小さな点検鏡で確認して、ボールペンが見えたら試してみてください。
針金ハンガーを伸ばして下さい。かなり硬い針金なので、プライヤーやペンチを使い、先端をUの字に曲げます。ヘッドライトで照らし、点検鏡でボールペンの位置を確認しながら、針金ハンガーの先端をボールペンに引っ掛けます。
カタカタ動く様でしたら、少しずつ慎重に手前にずらしてきます。途中、針金ハンガーに引っ掛けたボールペンが、何度も落ちてしまっても、イライラせずに何回もチャレンジしてください。手前に取れた時は感動しますよ。
あまりおススメできないボールペンを取り出す方法
先程説明した便器の裏側からローポンプスーパープラスで押し出す方法で、何度やっても取れない事がありました。詰まっていたものはプラスチック製のボールペンです。便器の上の穴から、ボールペンが縦になっているのが見えたのですが、完全にハマってガッチリ噛んでしまい、うんともすんとも言わない状態でした。
先ほど説明したように針金ハンガーを加工し、先端を真っ赤になるまでバーナーで炙り、ボールペンに押し当て溶かして切断したことがあります。その後、便器を揺すったら切断されたボールペンが出てきました。この方法でゼブラのハイマッキーに、穴を開け引っ掛けて取り出したこともあります。
但し、便器は高熱により破損する恐れがあるため、赤くなった針金が絶対に便器に触れない様に作業しなくてはいけないため、万人にオススメできる方法ではありません。
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6便器を取り付ける
床フランジの二箇所のボルトを、排水管のセンターにくるように位置を調整します。
ココに注意
Pシールガスケットを便器側に取り付けます。フランジ側に取り付けると、便器を設置したときに便器の穴の出っ張っりがPシールガスケットを押し潰してしまい、排水管内に入り込んでしまうことがあります。水が漏れ防止という、本来の役目を果たせなくなるのと同時に、管を細くしてしまい詰まりの原因にもなります。
便器の取り付け穴と、床フランジのボルトの位置を合わせながら、真上から便器を置きます。床に便器の跡が残っていれば、そこに合わせると作業しやすいですよ。
二箇所の木ネジと二箇所のナットを仮止めして、前後左右対角に少しずつ締めていきます。木ネジはきっちり締めても大丈夫ですが、あまり強く締め付けると便器が割れてしまいますので注意しましょう。フランジボルトのナットは強く締めすぎると、プラスチック製の床フランジですと破損してしまいますので、丁度良い塩梅で。
まだ締まりそうだなというところで止めて、便器を軽く揺すってみましょう。動かなければOKです。
あとは外したときと逆の順番でタンクを取り付けます。
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7タンク取付とポイント
①密結ロータンクボルトの増し締め。
②パッキン類は新しいものに交換する。
③先にタンクを便器に本締めで固定してしまうと、給水管の位置が合わなくなる場合がありますので、給水管の袋ナットをタンク側に2~3ネジ回して仮固定して、袋ナットとタンク取付けボルトの締め付けナット三点をバランスよく締めていきます。
④給水管の袋ナットを本締めするときは、ボールタップをしっかり押さえながは締めます。
ボールタップが一緒に回ってしまうと、ボールタップのアームが変形してしまうことがあります。
⑤最後に止水栓を開けて流してみて、給水管と便器まわりから水漏れがないか確認します。
その他のタイプの大便器
隅付きロータンクタイプ
3点止め固定の大便器
①②③で固定されているタイプです。
Pシールガスケットではなく、排水管にゴムパッキンが取り付けてあります。上からはめてあるだけなので、一番簡単に脱着ができます。両手で便器を抱えながら、真上に持ち上げると簡単に外せます。そこそこ重いので、腰を傷めないように注意しましょう。
【自分で直す!トイレの詰まり|便器を取り外す方法】まとめ
実際に便器を取り外している写真を見ると、これはかなり大変なんじゃないか?と思われると思いますが、取り付け方は単純です。タンクと給水管をつなぐ袋ナット×1、タンクと便器をつなぐボルト×2、大便器を固定するフランジボルト×2、木ねじ×2で合計すると7箇所のナットやボルトやネジだけで固定されています。意外と単純に取り付けられています。便器脱着のポイントをまとめました。
ポイント
便器とタンクを破損させないように慎重に作業する
給水パッキン、密結パッキン、Pシールガスケットは新品に交換する
Pシールガスケットは便器側にに取り付けて床フランジの上に置く
床の取り付け跡に合わせると位置決めがしやすい
腰を傷めないようなに作業する
詳細は本文を参考にして頂き、上記のポイントに気を付けながら作業して下さい。取り外しの過程を写真に残しながら作業するとスムーズに行うことができると思います。
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