かなり古くて既に廃番になっている、INAXのカスカディーナという大便器があります。ロータンクが丸いダルマ型の便器です。古いアパートやマンションなどで見かけます。
このカスカディーナに限るのですが、フロート弁(TOTOでは排水弁部という製品名)の筒(オーバーフロー管)が根元から折れることがあります。「排水弁部が根元から折れた」との依頼で伺うと、ほぼ100%カスカディーナのフロート弁です。
最近の便器のフロート弁は構造が進化しています。ここでは古いタイプのINAXフロート弁(TOTOでは排水弁部)の交換方法について説明します。
この記事を読んで分かること
自分で直す難易度
フロート弁(排水弁部)の交換方法が分かる
折れてしまった時の応急的な使い方が分かる
■ もくじ
折れやすいカスカディーナのフロート弁
INAXのフロート弁はフロートゴム玉の上下で水を流したり溜めたりする仕組みですが、レバーを作動させると鎖でつながれたフロートゴム玉が持ち上がります。そのゴム玉を筒のリング部分で押さえます。毎日毎日、このリングに負荷が掛かりポキっと逝ってしまいます。
折れてしまうと水が流れっ放しになります。突然のトラブルで慌ててしまいますが、落ち着いて止水栓を閉めて水を止めましょう。
ここではこのタイプのフロート弁本体の交換について説明しますが、多少部品の形に違いはありますが、INAX、TOTO、SANEI製など、交換方法は基本的に同じです。
使用する道具
使用する道具
- マイナスドライバー(ドライバー式止水栓の場合)
- ラクラッチ(モンキーレンチでも可)
- パイプレンチ(66mm以上対応できるサイズ)
フロート弁を交換する方法
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1ツバ付給水管の袋ナットを外す
始めにボールタップに接続している袋ナットを、ボールタップに対して反時計回りに外します。この時、ボールタップが供回りしない様に片手で押さえながら袋ナットを外します。
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2ロータンクの密結ボルトのロックナットを外す
フロートゴム玉を引き上げて、ロータンク内に残っている水を可能な限り抜きます。INAXやTOTOの一般的なロータンクの外し方は同じです。左右2箇所の密結ボルトのナットを上から見て時計回りに外します。
写真の中で使用している道具は、TOP工業のラクラッチという工具です。8mm、10mm、12mm、13mmのナットに対応するので、大便器の脱着にかなり重宝します。タンクを固定しているナットのサイズは13mmです。13mmのソケットにナットを合わせれば、ラチェット機能でスピーディーに外すことができます。モンキーレンチでも外すことはできます。
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3タンク内の水を完全に抜く
ロータンクが外れたら内部に残った水を便器に流します。ロータンクは衝撃を与えると破損してしまうので、両手でしっかり抱えて丁寧に水を抜きます。水が完全に抜けたら作業しやすい場所に移動させます。床が傷付かないように広げた新聞紙や、使い古したバスタポルなどに置きましょう。
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4折れたフロート弁を取り外す
レバーにつながっているフロートゴム玉のチェーンを外します。タンク底の裏側を見ると、樹脂製の大きなロックナットで固定されています。
固定されているのはこのロックナットだけですので取り外しは簡単です。ナットの外径66mmに対応する道具を使用します。金属製のロックナットの場合はモーターレンチを使用しますが、このタイプはナットに角がないためモーターレンチでは外せません。ロックナットをよく見るといくつかの凸があるので、引っ掛けて回すような専用の工具があると思われますが、他でも使いまわしの効くパイプレンチが良いと思います。
パイプレンチをロックナットの幅に合わせて噛ませたら、供回りしない様にタンク内部の折れた箇所を押さえ、ゆっくりと反時計回りに回せば簡単に外すことができます。捨ててしまう部品なので傷がついても気にせずに外しましょう。
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5新しいフロート弁を取り付ける
交換するフロート弁の品番はTF-1890Cです。ホームセンターなどでには置いていないので、ネットで購入します。
このタイプがよく折れてしまうことは、メーカーも承知していると思われますので、在庫が切れることは当分ないと思います。フロートの取り付け位置は、筒の部分がボールタップの浮き玉に当たらない位置で取り付けます。元々取り付けてあった位置どおりに取り付ければ問題ありません。タンク内部の筒に負荷が掛からないように手で押さえ、ロックナットを時計回りに締め付けます。
追記
※このタイプは筒の長いタイプと短いタイプがありましたが、現在、短いタイプは製造されていないようです。筒が長くて蓋が閉まらない場合は、筒を丁度よい箇所で切断して使用します。全く問題はありません。
ココに注意
パイプレンチの良いところは、モンキレンチの様にその都度外して合わせなくても締め付けができるところですが、レンチ機能でスライドさせてガンガン締め付けてしまうと、ロックナットの材質は樹脂なので破損のおそれがあります。一度挟んだらパイプレンチがズレないように、ゆっくり締めていきます。力任せに思いっきり締め付けなければ破損することはありません。
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6ロータンクを便器に取り付ける
外したときと逆の手順で取り付けていきます。但し、ツバ付給水管が使用されている場合、左右の取付けボルトのナットを本締めしてしまうと、ボールタップと給水管が微妙にズレてしまい接続できなくなることがあるので、固定する左右のナットと給水管の袋ナットの三点をバランスよく締めます。
下の写真の様なフレキシブルなホースやフレキ管は、後から位置を合わせることが可能なので、先にロータンクを固定しても大丈夫です。
ココに注意
給水管の袋ナットを本締めする時は、必ずボールタップを片手で押さえながら締めて下さい。ボールタップが一緒に回ってしまうと、浮き玉の支持棒が根元から曲がったり折れたりします。
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7止水栓を開く
全て取り付け終わったら、止水栓を開き水漏れがないか点検します。点検する箇所は袋ナット、左右の密結ボルトのロックナットです。水漏れが無ければ作業は終了です。
交換するまでの対処方法
部品が届くまでの間、応急処置として折れた箇所の内側に短い銅管を差し込んで、継ぎ目のまわりをコーキングをする方法などもありますが、このためだけに銅管やパイプカッターやコーキング剤を購入するのも大変なので、部品が届くまでの間は、バケツに水を汲んで流しましょう。バケツに溜めた水を上から流せば普通に使用することができます。少々面倒ですが一番無難で確実な方法です。
【トイレロータンクのフロート弁を交換する方法|カスカディーナ】まとめ
INAXのフロート弁やTOTOの排水弁部を交換することは滅多にありませんが、このカスカディーナに限ってはよく交換します。水まわりの修理全般に言えることですが、互換性のある部品材料と、作業を効率的に行う道具のチョイスを間違わなければ、ほとんどの場合は簡単に修理することができます。ご自宅の便器が該当し、検索してこのサイトに辿り着いた方、参考にしてみて下さい。